皮膚の創傷治癒過程について
《 皮膚の構造 》
皮膚は表面から順番に表皮・真皮・皮下組織の3つの層に分かれている。皮膚は、身体の全表面を覆って、外界との境をなし、内臓などの内部諸器官を外部の刺激や衝撃から保護している。しかし、単なる隔壁ではなく、それ自体生命の保持に絶対不可欠の種々の機能を営む重要な器官である。また、体温調節などの独自の生理器官であり、全身が調和する働きをする。皮膚の表面には無数の細かいくぼみ(皮溝)と高まり(皮丘)がある。

第1期癒合:手術創などの切創(縫合創)の治癒過程。皮膚欠損がないため早期に治癒する。
第2期癒合:皮膚欠損のある場合(創が縫合閉鎖されなかった場合など)。
→ 創腔は肉芽組織で満たされた上皮でおおわれなければならない。
→ 創の収縮程度が大きい。
→ 基本的には第1期癒合と同じと考えてよいが、創閉鎖に大変時間がかかる。
受傷後2時間 :出血・滲出液(液体の逸脱)・浮腫
受傷後6~8時間:①創縁に多核白血球が出現。②血管拡張、フィブリンの析出が始まる。
※ 多核白血球には好中球プロテアーゼなどの酵素を多く含んだ顆粒があり、phagocytosis(細胞による摂取および消化の過程)、組織の分解作用がある。多核白血球の生存期間は短く、感染などの二次的要因がなければ急速に減少してゆく。
受傷後2日(48時間)以内:①毛細血管が創傷面に向かって再生現象を起こし、肉芽組織の形成が始まる。②多核白血球は減少し単核細胞が増加してくる。→ 線維芽細胞の原形。※ 上皮は大変再生力の盛んな組織で、膠原線維形成の始まる前に増殖と移動を開始している。
受傷後3日(72時間)経過:紡錘形の線維芽細胞が析出した凝血中のフィブリン網および新生血管に沿って増殖し始める。線維芽細胞はフィブリン網内を遊走するが、過剰のフィブリン網は逆に線維芽細胞の遊走を阻害すると言われている。フィブリン網は線維芽細胞に成長の方向を教える特殊な作用があるのか、単に成長の足場を与えるのかは分かっていない。※ フィブリン網はコラーゲン生成とともに消失してゆく。増殖した線維芽細胞は創内へ基質となる物質(多糖類・糖蛋白など)を分泌し基質がつくられ、いよいよ膠原線維形成の準備がなされる
肉芽組織…治癒過程にある創,潰瘍,炎症組織の表面に肉芽隆起を形成する血管結合組織。
単核細胞…単核白血球。単球は循環血液中の白血球の3~7%を構成し、リンパ節・脾臓・骨髄・疎性結合組織にもみられる。
線維芽細胞…細胞形質をもつ星状、または紡錘形の細胞で結合組織中にあり、膠原線維を形成。
膠原線維…結合組織・腱・腱膜およびほとんどの靱帯を形成する線維で、軟骨基質や骨組織中にも大量に存在する。
受傷後4~6日:線維芽細胞よりプロコラーゲンが細胞外に分泌→プロコラーゲン・ペプチダーゼにより余分のペプチドが切断→トロポコラーゲンとなる。トロポコラーゲンはさらに一定のずれをもって隣接する分子と架橋による結合(重合)をし、膠原線維となる。
プロコラーゲン…膠原質の溶解性前駆物質。膠原質合成の過程で線維芽細胞と他の細胞によって形成される。
トロポコラーゲン…三重らせん状連鎖ペプチドからなる膠原線維の基礎単位。
受傷後5日頃まで(滲出期):膠原線維生成開始 ※ 創面はいったん底部まで上皮におおわれる。
受傷後5日頃以降(線維形成期):膠原線維は急速に生成:それぞれ結合して線維網をつくって創を組織化していくのと同時に創の抗張力も増大してくる ※ 受傷後4週頃まで続くとしている。
受傷後2~4週(成熟期):瘢痕を形成する。
①新生血管はしだいに退化し消失
②膠原線維生成に必要な活動性線維芽細胞やムコ多糖類減少→ 膠原線維生成が低下
③創傷部の外見の色調は紅色からしだいに白色に変化
※ 上皮は再生するとコラゲネースを分泌し創の膠原量をコントロールする。また線維芽細胞も上皮に接するとコラゲネースを分泌し、創の成熟とリモデリングの大切な要素となる。